竹の種類

基本的な竹の種類

身近にある竹としては、孟宗竹と淡竹、真竹があります。茶杓、花入、柄杓には真竹を使います。ここに幾つかの竹を紹介します。

孟宗竹

モウソウチク:マダケ属。一般的に春一番に食べる筍の大きく太いものが孟宗竹。孟宗竹はその名の通り太くて大きな竹です。孟宗竹の名は中国三国時代の呉の孟宗に因んだ名とされ、800年頃に道雄上人が唐から、1200年頃に道元禅師が宗から持ち帰ったなど幾つかの説があります。

孟宗竹の竹林

孟宗竹は華道の花入の寸胴や、置筒に使われます。池坊などの華道では置筒に根のついた大きなもの(高さ六十センチほど)が使われます。

茶道の茶具としては、根のついた部分が水差しなどに使われます。

1ヶ月で20m程も伸びる場合もあり日本では一番大型の竹です。かつては雑器、農業資材、漁業資材などに使われてきました。まだ農業、漁業の資材(例:牡蠣の養殖など)として使われる例は残っていますが、成長が速く、戦後は放棄竹林も増えているため、有効活用の道が研究されています。

孟宗竹の穂は、葉が多く枝穂が細かく蜜になるため、竹箒に利用されます。

淡竹

ハチク:マダケ属 中国原産。孟宗竹よりもひと回り小さい淡竹(はちく)です。5m〜15m程で大きいものは20m程になるものもあります。尚、破竹の勢いというのは筍が出た後の成長の速さを示す言葉で、淡竹の別名ではないようです。

淡竹の竹林

淡竹は茶筅の材料として使われています。割ったときにまっすぐに繊維が割れていくという点で、茶筅作りには淡竹が最も適切とされています。そのほか、土壁の下地に使う小舞竹にはこの淡竹が使われています。

孟宗竹のあと、五月頃から上がり始めますが、六月の雨季に上がったものは1日に1〜2mほども伸びます。淡竹は表面に粉を吹いたような皮目のため、一見してそれとわかります。

筍はエグミが少なくさっと茹でただけで食べることができ、甘味があり食感も柔らかく美味で、この地域ではよく食べられています。

真竹

マダケ:中国/朝鮮/日本でも化石が発見されており日本にも元々自生していたとする説がある。砂礫質を好み、河川敷、里山の斜面でも水の多いところを好む傾向があります。

茶筅以外の竹の茶具は(茶杓、柄杓、花器)ほとんどが真竹を使います。真竹は皮のキメが細かく、粘りがあり、皮に艶があります。皮目から身の部分まで繊維に粘りがあるのが真竹の特徴です。初釜の青竹の茶筅は青々しく、また粘りがあるため濃茶と薄茶を兼ねた茶筅になるとして真竹が使われる場合もあります。

真竹の竹林

真竹の筍はあまり知られていませんが食べて渋みがなく美味しいものです。筍の時期としては孟宗も淡竹もおわった一番最後の六月ごろにあがります。

表面の白っぽい層は蝋質で、火で炙ると溶け、素早く拭きあげるとよい艶がでます。

真竹の表面にはうっすらと白い蝋質がある

黒竹

クロチク:紫竹/シチク 淡竹の一種。黒竹は棹が黒く、笹の葉の緑とのコントラストの美しい竹です。あまり大きくならないため、庭園の装飾に使われます。

黒竹は棹が黒い

茶具にはほとんど使われませんが、武者小路千家では黒竹の茶筅を使います。宗徧流、庸軒流で使われる。性質は淡竹と同じなため細く割り安く、茶筅に適しています。

年若い黒竹は棹が明るい色で、一年二年と経つと真っ黒になる

篠竹

シノタケ、女竹-メダケ、苦竹-ニガタケ等、地域によって幾つかの呼び名がある。篠竹は農業に使われてきたため、里山付近で野生化しているのがよく見られます。棹の直径は1cm前後。静岡の沼津地方の垣根の沼津垣は、海風の防砂のために作られたもの。16本を束ねながら網代に編んでおり、繊細な意匠が美しい。京都の寺院の垣根にも見られる。

茶道具になる竹

真竹を使う

竹の種類は上記のように様々ありますが、茶筅以外(茶筅は淡竹)の茶道具として使われる竹は基本は真竹のみです。

皮目にみられる様々な景色は、真竹の品種によるものと、真竹の成長過程などで生育環境や自然現象により現れたものの二種類があります。

真竹は青竹を伐り出し、油抜きや灰汁抜きなどの処理をしたあと乾燥させて保管したものが基本の材料となっています。

様々な美竹

様々な美竹

京銘竹の白竹

竹の表面を火で炙り、中から滲み出てきた油分を綿布で綺麗に拭き取り、天日で干して乾燥させ保管します。

京都の歴史ある竹材店は昔ながらの技術で丁寧に処理し、選び抜いた銘竹を扱っています。伝統的な技術によって油抜きされ磨かれた「白竹・胡麻竹・図面角竹・亀甲竹」は京銘竹と呼ばれています。

「京銘竹」は、京都市の伝統産業の一つに指定されており、京都府知事指定「京もの指定工芸品」にも指定されています。当方では、穴吹竹材店さんの主に白竹を使っています。

雪割れ

絞竹

絞竹(皺竹)シボチク:絞竹は真竹の一種。原産地は淡路島。カタシボは(兵庫県龍野市)。竹の皮の表面に細かい線(シワ)が縦に入る性質を持っているもので、花入、茶杓、茶室の床柱などに好まれます。

一番手前がシボ竹の筒。縦に線が入る。
シボ竹(茶杓材料)

原産地の淡路島では絶えてしまったようで、日本各地の植物園(京都府立植物園,洛西竹林公園,富士竹類植物園など)に僅かにある他、黒田正玄さんのお庭など限られた箇所にしかないたいへん貴重なものです。希少な竹のため、茶道具として珍重されています。ほとんど手に入らないものです。

実竹

実竹(ジッチク)は節に特徴があります。竹が根になるか、迷ってその痕跡を残しながら、枝の芽を同時に持っている状態のものを実竹といい、希少な価値があるとされています。芽の隣にポツポツと丸い粒が見られますが、これが根の痕跡です。

浸み竹

浸み竹(染み竹・シミタケ)川辺に近いところや、山の中の水道(みずみち)のあるところや沼のちかくなど、水分の多いところによく出る真竹の景色です。

浸みが出ていればなんでも茶具になるかというとそうではなく、様々な条件を満たしているものを選び、切り出して加工します。茶杓の樋に浸みがちょうどくるような浸み竹はごくごく稀で、たいへん貴重です。このシミは竹につくバクテリアが描く自然の文様です。浸み竹を切った際には、小口から独特な匂いがします。

虎斑竹

虎の皮の斑紋に似ることから虎斑竹(トラフダケ)という。トラフ竹は一部地域に自生する珍しい竹で、菌が寄生することでこの文様が作られている。

トラフダケ

煤竹

煤竹は囲炉裏を持つ茅葺屋根の家の天井や、奥戸さん(竃)の天井で百年、二百年と燻されたものをさします。新しく煤竹が作られることはほぼないため、たいへん入手し難いものです。当方では古い農家が解体された時に譲っていただいてストックしています。

洗った後、磨き上げる前の状態
縄目の色々

煤竹とは何か

家を建てる際に竹を構造に使う場合は、家のそばで採れる竹を使う為、真竹のほか、淡竹や孟宗竹も使われます。

一方、例えば京都の美山地方の場合は、材木が主流の地域のため、竹ではなく木屋根を組んであるなど建築の様式が違い、どこでも古い家なら煤竹があるというわけでもなく興味深いところです。

竹で屋根の骨組みを作っていた地域の中でも、最も状態のいい煤竹は滋賀県の湖北地方に多くみられます。滋賀の湖北地方の煤竹が最高級の品質とされています。

また、煤竹は囲炉裏や奥戸さん(竈門)などで燃やす木の種類によって、竹につく色目が微妙にかわります。煤が多く発生しない木を燃やす場合は色は浅くなりますし、煤が多く発生するような材を使っていれば、竹に濃い色がつきます。

松の木を焼べて燃やした場合の煤がつくと、紫味の色がでます。松が囲炉裏などに使われていた場合は、こってりと煤に混ざって松脂が竹についています。松は燃やすとよく煙がでます。

煤竹の色には針葉樹と広葉樹との差があり、針葉樹の中でも松は粘りがあるため、色が濃くつきますが、広葉樹を使った場合は煙があまり出ないこともあり、竹につく色は薄くなると考えられます。

この様に、茅葺でも地域により、また家々が使う薪の種類によって煤竹の色味は異なってきます。

また、煤をかぶっていればなんでもよいというわけではなく、真竹の粘りがまだ残っており、茶杓になる(撓めることができる)ものは数少なく希少です。茶杓やその他の茶具になるものを選別した後、付着している煤を水洗いしたのち、少し火で炙り、艶を出します。昔は籾殻で洗って煤を落としていました。

煤を落とす前のもの。選別して茶杓にする。この煤を水かぬるま湯で洗い流します。
箸などに使う煤竹。直径が太い。

農家の天井で燻された竹は藁縄などの縄目が白く残っているものが様々な陰影を作り景色とされていますが、蚕部屋の床(例:四国など)として使われていた煤竹には縄目がないことが多く、これもまた味わいのあるものです。

胡麻竹

胡麻竹は竹藪の中でなんらかのアクシデントにより立ち枯れの状態になり(穂先が折れたり、竹に傷が入るなど)、竹藪の中に存在する菌が付着して黒い小さな粒が一面に現れます。胡麻竹の文様は自然の菌と竹の生命が描く文様です。このような胡麻竹は竹藪にたくさん見られますが、その中でも茶道具になる竹は油気や弾性が残っている必要があり、そういった条件を満たす胡麻竹はごく僅かです。

京都では冬の寒い時期に穂先を飛ばして胡麻を”ふかす”作業をし、人為的に胡麻竹作ります。長岡京市や向日町あたりでは、十二月〜二月、竹にハシゴをかけて職人が竹の先を飛ばす(伐る)という作業が風物詩としてみられます。

胡麻竹

亀甲竹

亀の甲羅のように互い違いに節がきているもので、孟宗竹の一種です。この亀甲竹は茶室の結界などによく用いられます。そのほか、建築材料に利用されています。

その他の材料

京都・鞍馬寺のお松明

竹の材料で製作するほか、様々な謂れのある材料で作ってほしいというご依頼もあります。写真の鞍馬寺の火祭りで使われたお松明は茶杓と花入にというご要望です。

こちらは伊勢神宮の遷宮の折に解体された柱から、お茶杓を削ってほしいというご依頼があった際に頂戴し、ストックしている古材です。

このほか、二月堂のお松明に使われた竹、園城寺さんの庭でお譲りいただいてこられた竹で作るというご依頼もありました。

このように、貴重な、謂れのある材の一部を残して受け継ぐために作られる茶道具もあり、大切な仕事としてお受けしております。歴史や材を大切にされる文化の一翼を担えることは職人にとっても大きな誇りです。

また、寺社の古材のほか、記念になるような木、大切にしてこられた謂れのある様々なお庭の木や、旅先で入手された竹や木を加工してほしいというご依頼もあります。

古いご自宅をお建て替えなどで整理された場合などに、思い入れのあるご自宅の古材で茶杓を作る場合もあります。そういったお茶杓は、お祝いの記念品として使われることもあります。先生がお生徒さんへと、たくさんお作りになって配布されることもあり、思いを皆様で共有するというお茶道の世界に度々感銘を受けます。

茶杓はもちろん、その他お茶の道具、炉縁や割り香合などを作るご依頼もあります。中には、鹿の角や象牙で作ってほしいというご希望もあり、お受けする当方もたいへん楽しみなものです。

加工に向くもの、向かないものなどありますので、ご相談ください。


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