黒文字

茶室で菓子をいただく際に使われる菓子楊枝の黒文字。かつては茶人自ら庭の黒文字を削り、お客様にお出ししたとか。今は忙しい時代で、黒文字の木を庭で育てる方もそう多くはなく、業者が一手に引き受けています。
黒文字の楊枝は、黒文字の木から切り出して作ります。



黒文字:クロモジ 檜科の雑木落葉低木で針葉樹の下などにも生えると言われます。中国名は大葉釣樟(ダイヨウチョウソウ)。樹高2m〜6m程。早春に花が咲くので庭園や公園の植栽で喜ばれています。
黒文字の枝



緑の樹皮の上に藻類が付いて黒い斑紋が出るのを黒文字と名付けたという説があります。葉も樹皮木部ともに芳香物質を持ち、切ると強い香りが出ることから、様々に利用されます。
天皇陛下の即位式にあたる大嘗祭(だいじょうさい)でも、クロモジの香りは使われ、儀式の一端を担っています。
茶の湯では、菓子切りや箸のほか、香煎としても利用されます。白湯に細かく刻んだ黒文字の枝を浮かべていただくと僅かな香りが立ちます。少し煎じて出して頂いても。この香りがお客様をもてなす最高の贅沢とされています。クロモジは精神の安定を促す成分もあるため、お客様に茶事の前の時間をゆっくりしていただくために用いられてきたと考えられます。
また、細かく刻んで塩と混ぜることで、香りの塩としても懐石料理始め、さまざまなお料理を楽しんでいただけます。日本料理ばかりでなく、肉や魚料理にも。
黒文字は一つで複雑な香りを持っていますのでチャイのスパイスとしても楽しめます。
黒文字の効能とされるもの
幹と枝を乾燥させたものは生薬の「ウショウ(烏樟)」釣樟(チョウショウ)、釣樟根皮(チョウショウコンピ)として薬酒などに用いられてきました。
黒文字(クロモジ)の香りの成分は、リナロール、 ゲラニオール。
抗菌・消炎作用により、胃腸の不調や皮膚トラブルを緩和。神経を鎮め、安眠を促す効果があり、免疫力向上や風邪予防にも役立つとされています。
- 精神安定効果、リラックス効果
- 安眠効果
- ストレスによる疲労感や不安、悲しみ、孤独感を緩和
- 胃腸の働きを整える
- 痰を除き咳を鎮める
- 気管支粘膜の充血を取る
- 血圧を一時的に下げる
- 抗菌・殺菌効果がある
- 免疫機能を高める
使用方法:
・細かく刻んだ枝葉は入浴剤として使用します。入浴での利用は皮膚トラブルや冷え症の改善に効果的とされます。
・小枝を煮出すと、爽やかな香りのピンク色のお茶になります。
・枝葉を蒸留して得られるクロモジ油は、石鹸や香水の香料として利用されます。
和製ハーブとしてのクロモジ:
クロモジは、日本特有の香りと薬効を持つ「和製ハーブ」の一つとされ、シソ、ヨモギ、山椒などと並び、古くから薬用や芳香目的で活用されてきました。特に香りの良さとリラックス効果が評価され、お茶や入浴剤、精油として幅広く利用されています。
また、信州大学学術研究院(農学系)河原 岳志准教授と養命酒の共同研究によると、「クロモジはインフルエンザウイルスの細胞への吸着と侵入を99.5%以上ブロックする」という結果も出ているそうで、利用に期待の高まる薬草です。※信州大学広報誌「信大NOW」第125号(2021.1.29発行)

当方では、削りたての黒文字の香りと生木のゴツゴツとした質感を楽しんでいただけるように、特別なご注文に応じることができるようにと山の一角に植えています。
株がまだ小さいため年に数セット程度しかご用意できませんので、ご希望の方はご予約ください。

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